サイトーのタカラヅカ備忘録~すみれの森で迷子~

好きな「エンタメ」「面白かったこと」についての沼備忘録。演劇・宝塚・映画・本、旅行等娯楽、趣味についてと思ってはいるけど、ほぼタカラヅカ関連になるでしょう。。真面目な考察はできません!心のおもむくまま~~

「オレステイア」ー歴史は回る螺旋と変奏曲ー

どうおばんです!サイトーです~!

気を抜くとすぐ更新が止まる遅筆野郎です。

梅雨入りしましたね・・・紫陽花のブルーが艶やかな季節になりました(珍しく時候の挨拶風なスタート)

昨日6月6日に初日を迎えた生田斗真さん主演の舞台『オレステイア』を観てきまして、

終演後席から立てないくらい衝撃を受けたので、感動を忘れないうちに書き留めたいと思います!

カッコつけたタイトルつけちゃいました(爆)

 

サイトーは考察頑張ってしようと思っても、できない性分でありますので、ここからの文章は大変読みづらいと思いますが、観劇された方は、そんな見方もあるね(笑)程度に・・・まだ観てない方は・・・ネタバレのようなところがあるので、プレーンな気持ちで見たい方はくるっとUターン推奨です!笑

『オレステイア』超ざっくりあらすじ

ロバート・アイク版の『オレステイア』は、アレスキュロスのギリシャ悲劇『アガメムノン』『供養する女たち』『慈しみの女神たち』の三部構成にイピゲネイアの話をつけ、第1幕で総大将アガメムノンが停滞する状況を打破し戦争に勝つために神託を受け、娘は殺されなければならないとされたことを受け、娘イピゲネイアを殺します。第2幕では、それを深く妻クリュタイムネストラに恨まれ戦争に勝利し帰還した夜アガメムノンは妻に殺害され、第3幕で息子のオレステスが父の仇討ちを、と実の母を殺害します。第4幕で復讐の女神に追われたオレステスが神々による裁判とアテナの一票の差によって許され、女神は慈愛の女神に変わるという話になっています。ただ、ここで許される=自分の殺人がなかったことになる、とはなるわけではなく、オレステスは結局起こった現実は変わらない、どうしたらいいんだと疑問を投げかけ終わります

(ね、超ざっくりでしたでしょう。。しゃべれば2分で終わってしまうくらい起こった出来事は超シンプル!でも・・・) 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー以下ネタバレを含みますーーーーーーーーーーーーー

大胆な翻案なのか、翻訳なのか、換骨奪胎なのか

ロバート・アイク版の『オレステイア』では、設定や登場人物名はそのままに、衣装は現代的なところからも分かる通り、現代版となり、スタートは女医とオレステスとの会話から始まるという変わったところから始まるのですが、

その中でも一番原作と異なる箇所は、次女エレクトラは・・・・・・・・・・・という点でしょうか(注:私は設定を知らずに第4幕で分かった時に鳥肌が立ってその感覚がとても面白かったので、終演まではあえて伏字でいきたいなと思います!笑 どうしても気になる~という場合は公演パンフレット見てみてください!!この情報量と知識量でなんと1,000円!!!宝塚もビックリ!!!超お買い得!!笑)

そう考えると、現代に設定を持ってきたことによる違いや意味も分かり、食卓のイスの数・・・とか、母の態度とか・・・1~3幕でちょいちょい違和感を感じていたことが急にひらけてきて、あれ?でもあそこの場面はどうだったんだろう・・・え、ちょっとまって!その時ってもしかして・・・!など、混乱する感覚になりました。

「さては、ロバート・アイク、会ったことないけど、相当めんどくさい人だな???」という境地です(天才に謝れ)

で、検証したいから結局もう1回観なきゃ!ウワーーーーー!!ってなりました。(あくまでサイトー個人の感想です★)

二重構造で進んでいくので、そこも面白い。

「そうなんだ!!」とネタバレを知らない観客(よほどカンがするどい人とかは別かもしれないけど)の場合、全体像がはっきり分かるのは第4幕なので、それまで漠然と感じていた違和感とかが一気にクリアになったとき、鳥肌が立ちました。

そう考えると、母が娘を殺されたことにめちゃめちゃ拘ったのについて仮説も生まれてきて、これは自分の中でどう消化したらいいんだろう・・・

 

命の対価

なぜ私たちが人を殺すのか、そして何故戦争だとそれが許される(と思わされる)のか

最初のきっかけは、イピゲネイアの死

ではなぜイピゲネイアが死ななくてはならなかったというと、男は戦争に勝つため、国家のためという

女は、そんなものはどうでもいい、私とあなたの娘が、私がお腹を痛めて産んだ子がなぜ戦争の大義名分のために死ななくてはいけないのかという

母と娘、父と息子

戦争での殺人は肯定する男、そんな男を殺人は殺人、命の前に男女の優劣なんてないはずと嘲りつつも母としての自負・役割を強調する女

なんというか、視点がいつもどこかシニカルで震えました。

随所にある男と女の区別というか区分けというか、上手く言えないのですが、みんな男女平等って言うけど、根底のところで決して分かり合えないのかもな~みたいな感覚が面白かったです。

最後の審判のところも舞台左が女性、右に男性が座る構図、全てにきっともっと深い意図があってそういう見せ方にしているんだと思うのですが

男は身内殺しに罪悪感を抱く(アガメムノンオレステスも)女は抱かない(母は殺すことに対して快感を得ていた風に演出されていた)という違いももっと考察できたら面白いんだろうな~と思いましたが、ここの神野さんの演技がすさまじかったので、

ぜひ目の当たりにしていただけたらと思います。

舞台衣装と色の使い方

これは、公式サイトでも言われている話なので、書いても大丈夫だと思いますが、イピゲネイアと捕虜で連れてこられた子は黄色のサフラン色のドレスを着ています。

COLUMN|オレステイア 新国立劇場 演劇(☜サイトーのブログよりはるかに面白い&ためになるのでぜひぜひ読んでみてください!!)

サフランは調味料で知られていますが、黄色の染色するには、非常に多くの原料を必要とする非常に高価なものだったそうです。イピゲネイアとカッサンドラがその色のドレスを着ますが、重要な場所でたびたび出てきます。エレクトラオレステスに黄色いドレスを着せてもらうところも意味深・・・

 

 あとは、アガメムノンオレステスエレクトラ(あと伯父と兵士もそうだったかも)の衣装は下のほうが白くよごし加工がされているんですよね・・・母クリュタイメストラと長女イピゲネイアには汚し加工はされていない。

なんか意味があるのだろうな・・・だれかこっそり教えてくれないかな・・・

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これです!ナタリーさんの記事からhttps://natalie.mu/stage/news/334525
演者のすごみ

キャスティングの妙を感じました。

おこがましながら、お一人お一人感想を申し上げますと、

生田斗真さん:顔が小さい!肌が白い!美しい!追いつめられる役で魅力的に見えるってセクシーですよね。。子供役もやるのですが、衣装も何も変えていないのに声色と目線でそうと伝わってくる!中劇場の大きな空間にも一人でいて耐えられる役者さんなんだなーと思いました。なんと!上半身脱ぎっぷりを見せていただけるシーンもございます(平伏し)

音月桂さん:このお役は音月さんだからできたお役とも言える・・・思わぬところでパッと帽子を取って脱ぎ捨て登場するところがですね、絶句してしまったほど、本当にかっこよすぎて、男役のエッセンスバリバリ残ってるところにハワワ~となりました(本当にちょろい)

今作でエレクトラってかなり掴みにくいキャラクターだと思うのですが、次観るときは絶対エレクトラに注目していただきたいいいいいいいい

第4幕の審判の場面では、場を掌握する落ち着きっぷり素敵でした。。。好き・・・

横田栄治さん:父アガメムノンクリュタイメストラが不倫するアイギストスを演じられます。アガメムノンがイピゲネイアを殺せと言われて葛藤する場面、葛藤を見せていただいてよかった・・・ザ・ギリシャ神話の登場人物!も納得の体躯で、舞台に重厚感と納得感がありました。

趣里ちゃんイピゲネイア:びっくりするほど細くて、つやつやふわふわの長い髪の毛と相まってお人形さんのよう

うさちゃんのお人形を抱いているのも、子供らしい変顔も、パントマイムでご飯もぐもぐ食べるところも全てキュートすぎて変幻自在で、、最&高

セリフの言い回しに、子供っぽいかと思ったら成熟した人のそれの声色だったりして、少女と女の二面性・不安定な少女性のインパクトが強く、これは趣里ちゃんしかできないお役だ・・・と思いました。

趣里ちゃんは、他にアガメムノンから捕虜として連れてこられた「カッサンドラ」も演じています。ここを趣里ちゃんが演じることによって、アガメムノンが娘を犠牲にしたことによって産まれてしまったゆがみのバランスの調整を取っているようにも見えたりして、なるほどな~~配役絶妙だ~~と舌を巻きました。

 

そして・・・神野三鈴さん!:一言でいえば底知れない母という女

すごみ 一幕は慈愛深い母・貞淑な妻のよう でもよく見ると、家族の抱えるきしみを一手に引き受けているように感じる演技がすごい

夫の決断に対して徐々に壊れていく様だったり、壮絶なる喧嘩、事が起こってしまった後の嵐の前の静けさのような目が据わっている様子とか、

二幕は衣装も髪型も変わり、母という役割を削ぎ落としたようで、セリフの発し方も堂々と変わり彼女の数年間の歳月を思わせる、一幕と全然違う・・・

 

 これをあと3週間やるって、心が持つのかい・・・?と勝手に心配になってます。笑

結局

最後は、無罪となるオレステスで、舞台は観客に対してWhat is next?と疑問を投げかけ終わりますが、原作のギリシャ悲劇では神々の許しを得たオレステスは、さらなる復讐の旅に出かけます。

まず自分の義理の伯母でありトロイア戦争のきっかけとなった美女ヘレネーを殺した。殺害理由は、『父アガメムノーンを10年に及ぶ戦争に連れ出し、家族崩壊の原因を作った不義の女を成敗する』というもの。

さらに、幼少時の自分の恋人であったヘレネーの娘ヘルミオネーアキレウスの息子ネオプトレモスに嫁いでいることを知ると、彼に決闘を申し込み殺した。ネオプトレモスは、トロイア戦争トロイアの王プリアモスを殺し、勇将ヘクトールの遺児アステュアナクス寡婦アンドロマケーの手から奪い城壁の外に投げ捨て惨殺、アンドロマケーを戦利品(奴隷)にした人物である。そのため、ヘレネーと同様にトロイア戦争での行いの報いを、オレステスの刃によって受ける形に。

その後、オレステスはミュケーナイに戻り王となった。

 

「行いには報いがある」「歴史は繰り返す」ということひしひしと感じました。

あとは、ちょいちょい観客に向かって言われてる・・・!ってなるセリフが多くありましてね・・・

例えばオレステスが裁判の場面で言う「どんなセリフでもその人の背景・ここまで来た間に考えていたこと・育ってきた環境によって受け止め方は全く違ってくるから、どれが正しいかなんて僕にはわからないし理解できない」(曖昧)みたいなことを言うんですけど、これまさにこの時間の状況じゃないか!と

ロバート・アイクが役者の口を通して言わせてますけど、「最後の解釈はお前ら観客次第だから!」ってぶんっ!と投げられた感じがしました。

 

いろいろ書いたけど、まとまってねえええええ

ま、一見は百文に如かず!ということですね!!

戯曲は!!!なんと!!!2019年7月号の『悲劇喜劇』に載っているという太っ腹ぶり!!!(早川書房さんの回し者ではございやせんよ)

www.hayakawa-online.co.jp

ぜひお手に取ってみてはいかがでしょうか・・・!